屋台が並ぶSoi(路地)をさらに進むと地元住民の生活圏。
午後4時。 女性は夜の商売の下準備か昼の商売の後片付けか、道端にかがんで皿を洗ったり戸口で火を焚いて料理をしたり。 男性は寝椅子に寝そべってテレビを見ていたり寝ていたり。
大通りの忙しない時間の流れは、とうに輪郭を無くし消えかけた残響のように遠くから空気を震わせているのを感じる程度で、住宅街にはゆったりした時間が流れていた。
ゆったりした時間にのせられて、僕もゆったりとF5.6の被写界深度目盛を頼りに目測でラフにピントを合わせる。 カメラを構えてファインダーをのぞくと同時に、こちらに向かって走ってくる子供。
それまでの時間の流れを巻き取るように、叫びにも近い笑い声を発しながら男の子は全速力で向かってくる。
住宅街に迷い込んだ見ず知らずのコンイープン(日本人)のすぐ横を走り去っていった。
振り返ってももう姿はなかったが、笑い声が遠くへ離れていくのを聞きながら、またゆったりと流れる時間と景色の中を歩く。